借用書がない場合の借金の時効援用
1 借用書がなくても支払義務は発生しますし、消滅時効にもかかります
借用書がなくても、金銭を借りた場合、当然、支払い義務が発生します。
借金することを、法律上は、金銭消費貸借契約が成立することを指します。この金銭消費貸借契約は、借用書を作成することを成立要件とはしていません。借用書のない口約束であっても、契約は成立するためです。
また、借金に関する権利義務ですので、借用書がなくても、一定期間が経過すれば、時効が成立し、支払義務は時効の援用をすれば消滅することとなります。
2 消滅時効の期間について
2020年4月に借金の時効に関する法律が改正されました。
そのため、借り入れが、法改正の前と後では、時効期間の判断が異なります。
⑴ 2020年3月31日以前に借り入れをした場合
ア 時効期間
銀行や貸金業者などから借り入れた場合は5年間
個人間の借金などは10年間
イ 起算点(時効期間計算の開始時点)
期限の定めがある場合には、期限の翌日から数えます。
これに対し、期限の定めがない場合は、借り入れた日から数えることとなります。
⑵ 2020年4月以降に借り入れをした場合
ア 時効期間
①権利行使できるときから10年、②権利を行使することができることを知ったときから5年、のいずれか早い方
イ 起算点(時効期間計算の開始時点)
①「権利行使できるとき」とは、期限の定めがある場合には期限の日を指し、期限の定めがない場合は借り入れた日を指します。
②「権利を行使することができることを知ったとき」とは、一般的には、権利行使できるときと同じになります。
3 借用書がない場合の起算点
借用書の場合、期限の定めや金銭消費貸借契約締結日について、記載することが多いです。
これに対し、借用書がない場合、期限の定めの有無はもちろん、借金した日が客観的に明らかにはならない場合があります。
そのような場合、メールやLINEなどのSNSでのやりとりの記録だったり、電話録音が証拠となったりしますので、特にSNSの記録は削除しないように残しておくことが大切です。
また、銀行口座に送金する形式で借金した場合には、銀行の送金記録も証拠となりますので、保管しておく方がよいでしょう。